山本容子さんの版画に池澤さんが文章を寄せられた「静物画」が筑摩書房から出ます。2940円
人が生きている時間に、食べたモノ、見たモノ、嗅いだモノ、触ったモノ、装ったモノ、遊んだモノ、使ったモノ、そして祈ったモノたちを描くことによって、日常から、人の生きた時間を採集してくることが出来る。そして、もう一度詳しくのぞいてみることも出来る。最後にはこれらのモノたちが集まって姿をあらわした時、人はこのように小さくて、つまらないモノたちに囲まれて、生き、そして死ぬという、日常の平等に、心がなごみ、人間をいとおしい存在としてみることが出来るように思えた。こうして結果的に四百三十四点の小さな静物画が誕生したというわけである。
山本容子(「あとがき」より)
かつてモノはずっとぼくたちの近くにいた。使い慣れた道具をなくすまいと人は真剣だったし、モノの方も迷子になっては大変だと必死で人にしがみついていた。……人は別れてもそれぞれに生きてゆくから、また会うこともあるし、そうでなくともお互いさま。しかしモノはこちらの手を離れたらその先はまず無いわけで、他人に拾われて使われれば本当に幸運、たいていの場合は土の上に落ちて、泥にまみれて、やがて朽ちていったのだろう。もう今はどこにもない。だから切ない。
池澤夏樹(「体重が八貫目だった頃」より)
目次より
モノの名について(池澤夏樹)/子供/食べた/男と女/体重が八貫目だった頃(池澤夏樹)/散歩する/聞こえる/匂い/三代前の先祖の斧(池澤夏樹)/働く/触る/祈る/あとがき
以上、筑摩書房のサイトより↓
http://www.chikumashobo.co.jp/top31.html
『静物画』というタイトルから想起されるのは、池澤さんの芥川賞受賞作『スティルライフ』ですね。
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